元気なうちにお別れも…

  ご機嫌いかがでしょうか。

 視界ゼロのみこばあちゃんです。

おはようございます。

今日も暑苦しい朝です。

 またも変異のコロナが猛威を振るっております。

当地も 爆発的な脅威でコロナが襲ってもいます。

 みこちゃんは故郷の山々に見守れながら最期を 迎えられたならと思っています。

 脳裏から離れないのが 母の入院時のお隣にいた29歳のその人は

若くして終末医療を受けておられました。

その人のあまりにも過酷ながんの末期はそれは痛くて痛くて苦しいもので

あったろうと思われます。

両親も声が出せないほどの痛烈な若者ゆえの悲鳴にも似た

「殺せー 殺せーと連日命の限り叫ばれると

言葉にもなりません。

 みこちゃんは時としてそのお方の悲鳴が夜を妨げたりもします。

 今思えば わかっているのであればもっとお楽にしてあげる方法もあったのではと

思えてなりません。

家族の最期「ありがとう」は生きている今、伝えて 萬田 緑平

『穏やかな死に医療はいらない』僕はこれまでにたくさんの方々の最期を見届けてきま

した。高齢の方が多かったですが、若い方もいました。一つとして同じ最期はありませ

んでしたが、穏やかな最期を迎えることができた患者さんやご家族には、唯一にして最

大の共通点があります。それは、「死を受け入れていた」ということです。反対に、死

を受け入れることができない限り、穏やかな最期を迎えることはできません。心の痛み

は身体の痛みにも通じます。死を受け入れることができなかった患者さんほど、身体的

な痛みも強かったように感じます。

僕が病院勤務の頃にもっともつらかったことの一つは、ご家族から「本人には病名や余

命を伝えないでほしい」と言われることでした。こうなると、患者さんには?をつかなく

てはなりません。本当のことを知らせなかったツケを払わされるのは命のカウントダウ

ンが始まった患者さん本人だからです。30年間、たくさんの患者さんやご家族に余命告

知や病名告知をして、患者さんと一緒に乗り越えてきて、このことを確信しました。告

知なしで後悔しない看取りができたケースはありません。

ただし、具体的な余命の数字を言うことは、最近ではほとんどありません。余命を正確

に当てることは非常に難しく、患者さんがそれを知っても一つもいいことはないからで

す。

大切なのは?をつかないこと。具体的な数字は言わずとも、状況を悟ってもらうことです

。しかし現実には余命や病名の告知に関しては、ご家族の意向に従うしかありません。

だからこそご家族には勇気を持っていただきたい。患者さんとご家族の残された日々に?

があるのは悲しすぎます。

「余命は言わないでほしい。在宅緩和ケアで痛みを取って、元気になったらまた母に治

療をさせたい」

そういう娘さんの依頼を「お母さんの望みは叶えられますが、あなたの望みは叶えられ

ません」と断ったこともあります。お母さんの望みは自宅でのんびり暮らすことでした

が、娘さんのほうがそれを受け入れられなかったのです。

患者さんとご家族、僕たちスタッフの三者が本音で話せないと信頼関係は築けません。

それに余命を隠したままではお別れの言葉を交わすことができず、つらい看取りになっ

てしまいます。

父の死期を受け止めて告げた感謝の言葉

妻と娘さんと暮らす80代のHさんは訪問診療を1年間続けてきました。半年ほど前、Hさん

に余命について聞かれたことがあり、「あと半年後かもしれないし3カ月後かもしれませ

ん。いつその日が来てもいいように、奥さんや娘さんに想いを伝えておいてはいかがで

すか」という言い方をしました。その後、ご家族からもHさんからも余命の話が出ること

はありませんでした。

そしていよいよあと数日という状態になってしまったその日、僕は「Hさんが数日で亡く

なることを伝えなければ、よい看取りは迎えられない」と考えながらお宅を訪問しまし

た。すると、玄関先で奥さんから不在の娘さんの携帯メールを見せられました。

「父の死期が近いことはわかっていますが、かわいそうだから本当のことは言わないで

ください」

ここ数日の状態から、ご家族はすでにHさんの状態を悟っていました。しかしHさんとは

そんな話は一切していないとのこと。ご家族に余命の話はだめだと言われ、困りました

。でもHさんは今日か明日かという状態であり、時間がありません。僕はHさんにこんな

ふうに言いました。

「体が水を飲むことすら受け付けないんですね。痰を出す力すらなくなっているんです

。がんばらなくっていいんですよ」

これならご家族に恨まれずに本人に伝わるだろうという、精いっぱいの病状説明でした

。そしてご家族とスタッフの連絡ノートに、僕はペンを走らせました。

本当のことを伝えないと、お父さんと想いを語り合うことができない。もし、本人が「

さよなら」って言ったら、「そんなこと言わないで、がんばって」って答えず、「あり

がとう」って言ってあげてください。「ありがとうなんて言ったら、亡くなることを認

めているみたいで、かわいそう」と思うかもしれませんが、私は違うと思います

帰り際、玄関先に出てきた奥さんが教えてくれました。

「お父さんが『今までありがとう』って言ったんです。でも私、『そんなこと言わない

で。がんばって』って返してしまった。かわいそうで……」

このままご家族は何も伝え合わないままになってしまうのだろうか……僕は少し悲しい

気持ちになりました。

2日後、Hさんは亡くなりました。その翌日、娘さんからファクスが届きました。

??先生がノートに一生懸命書いてくださった告知の件、感謝いたします。ひと晩眠れず

に私もたくさん考えました。翌日、何気なく、父と二人きりになったとき、身体をもん

だりしていたら、父が「ありがとう、ありがとう」と言ってくれたので、私もしっかり

受け止めて、「こちらこそ、今までいろいろありがとうございました」と手を握り、父

の目を見てお礼を言うことができました。きちんとお別れと感謝を伝えることができま

した。その晩、また二人きりになったとき、「おまえとここにいられるのがいちばんう

れしい」と、苦しそうでしたが言ってくれました。「私もそうだよ」と言えました。家

にいられてたくさん話せて、しかも土日を目いっぱい使って父を看取れて、今はよかっ

たのだと思います。

「お母さん、生んでくれてありがとう」

ご家族に心の整理がついていなくて、「死んじゃいや」「もう少しがんばって」と言わ

れている患者さんは、もうとっくに命をきれいさっぱり使い切っているのに、なかなか

死に切れません。ご家族は「生きていてくれるだけでうれしい」かもしれませんが、本

人にとっては苦しい時間が延びるだけです。延命治療となってしまう余分な点滴、心臓

マッサージ、人工呼吸も、そうしたご家族の想いの反映だったりします。

僕の終末期ケアが上手にいくかどうかは患者さんのご家族にかかっています。患者さん

の苦痛を和らげる緩和ケアより、死を直視できないご家族の心を落ち着かせる家族ケア

のほうが大変なのです。家族ケアが必要ないと、僕の仕事はほとんどないと言ってもい

いでしょう。日常生活を送るための面倒は訪問看護師に任せて、痛みのコントロール

外、よけいな治療もしなければ患者さんはさほどつらくありません。

僕はご家族と患者さんには死の話題を避けることなく、「死んじゃうこと」を前提とし

て、そこまでいかに元気に生きるかの作戦会議をします。

「がんの最期は痛みで苦しむ」

「死ぬのはしょうがないが、死の苦しみが怖い」

不安なことを語ってもらうと、こんなふうに思い込んでいる人が多いです。そんな人た

ちに、「亡くなるときは眠っている時間が長くなるだけですよ」「痛みは医療用麻薬を

使って上手にコントロールしていきましょう」と伝えると、すごく安心してもらえます

。「寝たきりになったらどうしよう」と不安なご家族には、患者さんたちの穏やかで笑

顔もこぼれる終末期や看取りの様子を撮った動画を見せて安心してもらいます。思い通

りに生きて寿命を使い切ったら、寝たきりになったとしても、本当にあっという間なの

です。

そして僕がもっとも力をいれている家族ケアは、ご家族が患者さんの人生を一緒に振り

返ってあげること。楽しかった思い出を語り、歩みを讃えて、感謝を伝えましょう。必

ず「いい人生だった」と返してくれるはずです。「こんなはずじゃなかった」と苦しみ

ながら病院で意識がなくなっていくのと、家族や親しい人たちに囲まれて「いい人生だ

った」と言えるのでは、それこそ天国と地獄ほどの違いがあります。

惜しみなく感謝を伝えてください

それから父や母を看取るならば、「親父、ありがとね」「お母さん、生んでくれてあり

がとう」と伝えましょう。生んで育ててもらったことに対して感謝の言葉を伝えること

が、僕は一番の親孝行だと思います。

穏やかな死に医療はいらない

大人になった子どもたちの感謝の言葉に、夢中で子育てをしていた若き日の自分を思い

出したという女性の患者さんは、「人生、悔いなし」と笑っていました。親子だけでは

なく夫に妻に、惜しみなく感謝を伝えてください。お嫁さんから、「玉のような男子を

生みまして、立派に育て上げ、私にくださいましてありがとうございました!」と言わ

れて、二人で泣き笑いした患者さんもいます。

「ありがとう」と言ったら亡くなるみたいでいやだ。もっとぎりぎりになってから……

と躊躇するご家族もいますが、亡くなることに気づいていない患者さんなんていません

。皆さん、自分の死をわかっています。ぎりぎりになったら、きっとあっという間です

。骨になってしまったら、感謝は伝わりません。「ありがとう」は、生きている今、伝

えてください。何回でもいいんです。

前回:がん通院1年、65歳彼が自宅で迎えた穏やかな最期(6月30日配信)

萬田 緑平さんの最新公開記事をメールで受け取る(著者フォロー)