横田さん、恵ちゃんへの手紙

     ご機嫌いかがでしょうか。

 視界ゼロのみこばあちゃんです。

 なんと、だち事件が言われ始めて40年もの悲しく重い年が無謀に過ぎ去ったことでしょう。

 政府はこの案件は国民が新たにするためにも一年間の働きかけと

その経緯を明らかにする義務があると思います。

 人生における一番輝かしく過ごせる日々を

暗黒の中でさまよい、摸索する中でどれほどの

落胆に耐えてこられたことでしょう。

 恵ちゃんのお手紙を拝見し

取ろうにも似た多くの時に涙があふれて止まりませんでした。

政府の本気度が伝わりにくかった多くの歳月に

胸が苦しくやり切れません。

今年こそはと願うばかりです。

     山系より。

【めぐみへの手紙】「思いがけない奇跡を」お正月のたび、思います 痛恨の思い、底知れぬ焦り

めぐみちゃん、こんにちは。いよいよ新しい年を迎えましたね。昨年の初め、「今年中に、すべ

ての拉致被害者を救出していただきたい」と政府にお願いしながら、拉致問題が前に進まない

まま1年間が過ぎてしまったことを、本当に切なく感じます。

世間がせわしない雰囲気に包まれた年の瀬、お父さんとお母さんも落ち着かない日々を送りまし

た。めぐみちゃんがいた頃は、クリスマスや大みそかを家族みんなで、にぎやかに過ごし、す

がすがしい気持ちでお正月を迎えたものです。

クリスマスは小さなツリーを飾り、好きな飲み物を飲んで、楽しく食卓を囲みました。お母さん

が焼いたチキンも並べて、お祝いしましたね。大みそかは除夜の鐘を聞きながら年を越しまし

た。でも、めぐみちゃんが姿を消してから、寂しい年末になってしまった。

1年の終わりと、始まりを告げる鐘の音が響くたび、明るかったあなたを思い出し、大事なもの

が欠けているという現実を突きつけられます。

いつになれば、あのころの楽しい日々を取り戻せるのか…。お父さんとお母さんにとって年末年

始はとても辛(つら)い季節です。

めぐみちゃんは寒さに強い女の子でした。小さいころは冬になるとよく、のどを痛めましたが、

成長するごとに頑丈になった。お父さんやお母さんと違ってスポーツもよくできた。バレエや

水泳、バドミントン。体をよく鍛え、よく食べ、よく歌を歌い、拓也や哲也と一緒になって、

にぎやかに、はしゃいでいました。

日本は今、身を切るような寒さですが、北朝鮮の厳寒は、それと比べようのないものでしょう。

その厳しさに耐え、毎日、救いを待っているめぐみちゃんたちを思うと、心配で心配で仕方が

なくなります。

拉致されてあまりにも長い時がたち、身体が耐えられても、ひどく痛めつけられた心が耐えられ

るか。想像するだけで胸が苦しくなります。

それでも、あなたのことだから、「きっと大丈夫だ」と強く信じています。

クリスマスとお正月を迎えるたび心に思います。「拉致被害者と家族に思いがけない奇跡が与え

られるのではないか」−。人の祈りは簡単に通じるものではありませんが、めぐみちゃんたち

が一刻も早く祖国の土を踏み、日本国民をはじめ、世界中の人々が幸せに過ごせる日がやって

来るよう、願ってやみません。

めぐみちゃんが北朝鮮に拉致されてから、40年がたちました。昭和52年にあなたが姿を消し

、理由さえ分からない地獄の20年間が過ぎ平成9年、北朝鮮にいることが分かってから、さ

らに20年が過ぎ去りました。

大切な子供たちが助けを待っていることを知りながら、これほど長い時間がかかってなお、国民

を救うという当たり前の責務がなぜ果たされないのか。

怒りや悲しみはとうの昔に過ぎ去り、今はただただ、不思議に思うばかりです。

お父さんは足腰が弱り、思うように話ができなくなりました。お母さんも体調を崩して声が出な

くなり、大変な思いをしました。めぐみちゃんを追い続けた40年間、一瞬一瞬が死にものぐ

るいで深く考えることがありませんでしたが、振り返ると、想像を絶するとてつもない重荷を

抱え、生きてきたことを実感します。

昨年は本当に、いろいろなことがありました。北朝鮮は次々とミサイルを発射し、核実験を繰り

返しました。軍事的緊張で破滅の予感が広がりました。「めぐみちゃんたちは一体、どうなっ

てしまうのか」。不安にさいなまれ、眠れない日々が続きました。

お父さんもお母さんも80歳を超え、おじいちゃんとおばあちゃんになり、さらに重すぎる現実

を突きつけられ、疲れ果てています。

それでも、思いがけず、米国のドナルド・トランプ大統領が国連でめぐみちゃんのことを語り、

世界中に非道な国家犯罪の事実を知らしめてくださいました。来日された際には直接、家族会

の皆様と思いを伝える機会もいただきました。

さまざまな動きの中で、「本当に良い風が吹いてきている」と、前向きに捉えています。

もちろん、拉致問題の解決は日本が自らの力で成し遂げなければなりません。被害者を救えなけ

れば「国家の恥」です。世界中から侮られ、未来の子供たちに取り返しのつかない禍根を残す

でしょう。お父さんもお母さんも、日本は本当にすばらしい国だと誇りに思っています。だか

ら必ず、めぐみちゃんたちを救ってくださると信じています。

老い拉致被害者と家族に残された時間はありません。昨年も、拉致問題の解決を心から願い

、必死に闘ってきた方たちが数多く旅立たれていきました。

12月、増元るみ子さんのお母様の信子さん、曽我ひとみさんのご主人のジェンキンスさんが相

次いで亡くなられました。大切な人々が次々と世を去るたび、痛恨の思いとともに、底知れぬ

焦りを感じるのです。

でも、めぐみちゃん、知っていますか? 助けるまでに長い時間がかかってしまいましたが、日

本全国の人々が拉致被害者のことを思って涙し、怒り、救出を誓い、声を上げて応援してくだ

さっています。あなたの写真や、描いた絵が各地で展示され、街を歩くと、それを見たたくさ

んの方々から励ましをいただきます。

お父さんとお母さんは信じていることがあります。北朝鮮に拉致されるという厳しく、辛(つら

)すぎる試練の中で、被害者も家族も、大事な役目を神様から課せられているのだ、と。もう

少しで日本に帰ることができると思います。最後の最後まで勇気と希望を持ち、あきらめずが

んばっていてください。必ず助け出します。=随時掲載