桐野作品、「夜のたにをいく。」にふれ!!
ご機嫌いかがでしょうか。
視界ゼロのみこばあちゃんです。
桐野夏雄の「夜の旅を行く」の本に触れ
就職して間なしの1972年
当時の人は労働者までテレビにくぎ付けにさせられた
赤軍派による仲間のリンチ殺害事件に始まり
浅間山荘事件へと事件は展開していきます。
そのリーダーがなんと女性の長田洋子子には驚きを
禁じ得なかったことを記憶に鮮明に覚えています。
長田は「バセドウ氏病」であったこともあり
精神の均等型漏れなかったのかとも、妄想してもいました。
本当に優秀な能力を持ちながら仲間のリンチ殺害事件に展開する様子に
仕事まで手につかなかったことが思い出されます。
新聞紙面もそのせいさんなるニュースが目を奪うほどの凶悪さに
目を伏せながらもニュースにくぎ付けになっていたことを、思い出してしまいます。
人間業とは思えないほどの凶悪さに
「なぜこのような行動に出たのだろう」と疑問符の日々が続いたのはみな同じ感想であったと思
います。夜の谷を行く
39年前、西田啓子はリンチ殺人の舞台となった連合赤軍の山岳ベースから脱走した。5年余の服
役を経て、いまは一人で静かに過ごしている。だが、2011年、元連合赤軍最高幹部・永田洋子
の死の知らせと共に、忘れてしまいたい過去が啓子に迫ってくる。元の仲間、昔の夫から連絡が
あり、姪に過去を告げねばならず、さらには連合赤軍を取材しているというジャーナリストが
現れ − 女たちの、連合赤軍の、真実が明かされる。(「BOOK」データベースより)
永田洋子が亡くなった今、そして、東日本大震災が起きた今、君塚佐紀子は何を思っているのか
、どうやって周囲の人間と折り合っているのか、会って話したかった。それは、まるで噴き出
す間歇泉のように、突然湧いて出た強い衝動だった。
千代治からの電話で突然開いた穴。鬱陶しいだけだった風穴が、この日だけは、新鮮な風を運ん
でくる開け放した窓のように思える。啓子は震えるような渇望を覚えた。
君塚佐紀子、熊谷千代治は共に元連合赤軍のメンバー。佐紀子と啓子はかつて山岳ベースにおい
て、補助としてではあったもののリンチ殺人に加担しています。「総括」を怖れるあまり二人
して脱走、その後逮捕、そして服役。以後、二人は一切の連絡を断っています。
啓子は、ある日突然掛かってきた千代治からの電話に驚きます。かつてのメンバーとは二度と関
わらないと誓い、身を隠すように生きてきたのに、千代治は啓子へ、時を同じくして死亡した
軍の最高幹部・永田洋子を偲ぶ会への参加を促します。
連合赤軍について調べているというライター・古市洋造と会い、(今に至る心境を)話してみて
はどうかと持ちかけます。啓子の元恋人・久間伸郎が、酷く困窮しているのを伝えます。千代
治のせいで、清算したはずの過去の自分に、啓子はまた引戻されてゆくのを感じています。
真っ暗な夜の谷を、担架の脇に付いて歩く夢だった。もちろん山中に道などないが、何度か通っ
たために雪を踏み固めた跡が残っている。その道なき道を、担架と五人の男女がゆっくりと下
って行く。
枝を組み合わせて作った急造の担架は、遺体の重みできしきしと音を立てる。寒さで体の感覚は
失われていたが、臭覚だけはしっかりと、遺体から漂う凍った糞便の臭いを嗅ぎ分けていた。
「ほいさ、ほいさ」− おどけた掛け声をかけているのは、男の兵士の三上だった。前方を歩く
茂山は、終始無言で闇を見据えている。もう一人は、確か唐沢。唐沢は痩せていて喘息持ちだ
ったから、担ぐのも大儀そうだった。
女は啓子と君塚佐紀子の二人。二人は担架の脇を歩きながら、全員分のスコップを持たされてい
る・・・・
啓子は63歳になっています。元は小学校の教師。活動家になった後、親戚からはつまはじきに
され、両親は早くに亡くなり、今はスポーツジムに通いながら、一人細々と暮らしています。
かろうじて妹の和子と、その娘・佳絵との交流だけはあるのですが、佳絵には過去の自分のこと
を言わずにいます。佳絵が結婚するとわかり、啓子は、これを機会に昔あった自分のことを佳
絵に話そうと決心します。
ところがこの告白が仇となり、逆に関係はぎくしゃくし始めます。さらに佳絵が望むサイパンで
の結婚式へ行くとなると、入国の際、アメリカ政府に拘束されてしまう恐れがあるのが分かり
ます。
かつて啓子は、革命左派時代、米軍基地にダイナマイトを持って侵入し、小火騒ぎを起こしたこ
とがあります。それは罪に問われて当然の行為であり、時効がなく、一度起訴されるとそのま
まずっと起訴状が残っているアメリカでは、今でも逮捕されるのではないかと。
直前になり、啓子はやむなく、行けなくなったと和子に伝えます。啓子は、5年余の服役を終え
たことで罪は償ったと思っています。それが今に至り、巡り巡って、啓子はまた元に戻ってい
るような不思議な感覚にとらわれます。
月明かりの下、遺体の埋葬場所が見えてくる。あの土饅頭の下に、すでに四体は埋まっている。
今担いでいる五体目は、遠山美枝子だ。小嶋和子に次ぐ二人目の女性兵士の死者は、遠山美枝
子。あの遠山美枝子がとうとう亡くなったのだ。
啓子は残念な思いでいっぱいだった。なぜか、永田洋子がライバル心を剥き出しにして、革命左
派の仲間の前で、悪口を言い募った相手。(中略)その遠山美枝子が冷たい骸となって、同志
に担がれている。いや、遠山にとっては、革命左派の、まして啓子や君塚佐紀子など、同志で
も何でもなかったはずだ。
床下に置かれた凍り付いた顔と体。瞼をしっかり閉じているが、その瞼は無惨に腫れている。自
己批判しろ、自分の顔が綺麗だと思っているのなら、自分で自分を殴れ、と言われて従った。
腫れた顔が痛々しい。遠山の顔が、一瞬、透き通るような白い顔に変わって見えた。少しエラ
の張った四角い顔 −
− と、これは佳絵。啓子は、はっとして目を覚まします。久しぶりの深酒に、啓子は悪い夢を
見ていたのだと思います。時間はまだ午前五時のことです。
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