北朝鮮外交のゆくえはいかに??

     ご機嫌いかがでしょうか。

 視界ゼロのみこばあちゃんです。

 北朝鮮問題に関し、手のひらを返したような有効会談には

誰しもがそれぞれにシナリオを描かねば、とんでもないけっかをきたからうけることにもなろう?

 それぞれの国事情により、そのおもわくもさまざま?

日本は、北朝鮮に会談を求めるのではなくここは行方を見守りたいものだ。

 核への道は捨てがたいものがある北朝鮮にどのような駆け引きに出るべきかは

その歴史から学ぶことも大切ではなかろうか。

 日本には焦らず急がず丁寧が求められる。

 このまま平和条約に進むなどとはとても信じがたい!

     東洋経済より。

あらゆるシナリオを描き、先手を打つ兵法 米朝会談を裏から操っているのは文大統領だ

  

韓国の文在寅大統領がとっている北朝鮮外交は、次のような前提に基づいている。「米国をはじめとする大国を操るすることはできない。だが、大国が外交を繰り広げる舞台そのものは操れる」――。

大統領に就任して以降、文大統領はドナルド・トランプ米大統領と対立しないように細心の注意を払ってきた。トランプ大統領が「炎と怒り」で北朝鮮を挑発したときでさえ、そうだった。

文氏はトランプ氏をよくわかっている

だが、波風を立てないようにしながらも、文大統領は米国を違う進路へと導いている。北朝鮮金正恩委員長が「新年の辞」で対話の意思をそれとなく示したことや、平昌冬季五輪によってもたらされた対話のチャンスをとらえ、文大統領は南北対話を加速。こうした動きによって、米国が北朝鮮に好戦的な態度をとり続けることの正当性が徐々に薄らいできた。

NK News

現在のような首脳会談ラッシュを後押ししたのが、韓国特使団による訪朝である。金委員長と会談を持った特使団は、その足で米ワシントンに飛び、金委員長がトランプ大統領と直接会談を行う意向を持っていると伝えた。

文大統領は、トランプ大統領の行動がまったく予測不能であることは心得ている。だが、ある条件が整ったときにトランプ大統領がどのように反応してくるかについては、合理的な結論を導き出せることも知っている。

取引(ディール)の天才を自負するトランプ大統領は、「すごいディールメーカー」として喝采を浴びたがっている。自分抜きで何らかの交渉が成果を上げつつあるのを見たら、いても立ってもいられなくなるのがトランプ大統領だ。あらゆる機会を利用して、運転席に飛び乗ろうとするだろう――。トランプ大統領に花を持たせるチャンスを提供することで、反対に自らが主導権を握るのが、文大統領の兵法なのである。

文大統領は外交カレンダーをチェスのボードのごとく用いている。チェスのボードに駒を走らせるがごとくカレンダーを戦略的に利用するのが優れた外交なのだ。

文大統領がここまでに打ってきた最後の手が、軍事境界線上にある板門店での南北首脳会談だった。専門家の多くが指摘するように、米朝首脳会談の前哨戦となるものである。

だが、多くが見過ごしている点がある。韓国と北朝鮮が外交カレンダーをコントロールするのに成功したということだ。外交プロセスは現在、韓国と北朝鮮の手中にあり、文大統領と金委員長はともに有利な立場に立っている。今後、何カ月間にもわたって「2つのコリア」に対応を迫られるのは、米国をはじめとする大国のほうであって、その逆ではない。

「見栄え」こそが南北首脳会談で最大の内容

では、来る米朝首脳会談に向けて、先日の南北首脳会談が成し遂げた「お膳立て」とは何だったのか。今後の外交上の展開について、先日の共同宣言からどのようなことが推測できるのか。韓国と北朝鮮の外交的な影響力が強まるとは、どういうことなのか。そして、そこにある落とし穴とは、何なのか――。

まず、米朝首脳会談に向けた舞台設定から見ていこう。韓国と北朝鮮のトップが軍事境界線を挟んで握手する段階から、南北首脳会談における一連の動きは緻密に計算され、演出されていた。壮大な外交ショーにするためだ。

いろいろな点で、見栄えこそが南北首脳会談で最大の内容だったといえる。米朝首脳会談に向けて前向きな雰囲気を盛り上げ、物事が進展していくとの勢いを感じさせることが、南北双方にとって最大の目標になっていたからだ。こうした前向きな雰囲気によって、トランプ政権は米朝首脳会談が持つ可能性に、より大きな期待をかけるようになる――。文大統領は、このような希望を抱いているに違いない。

同時にこれは、米国に圧力を加えるものでもある。前向きな雰囲気をぶち壊せば興ざめとなるため、誠意を欠いたように見える行動は取りにくくなる、というわけだ。米朝首脳会談で何らかの勝利を手にしなければならないトランプ大統領にとっては、個人的なプレッシャーも強まる。トランプ大統領としては、自身の会談が南北首脳会談より、しょぼい結果に終わったと思われるようなことは、何としても避けたいところだ。

ポジティブな雰囲気は金委員長にとってもプラスだ。ただ、理由は多少異なる。南北首脳会談の成功はもちろん、北朝鮮国内における金正恩体制の正当性を高めるのに役立つ。だが、これは同時に米朝首脳会談に対する期待値を引き上げ、北朝鮮と何らかの取引に応じなければならないような状況にトランプ大統領を追い込む圧力としても作用する。前向きな雰囲気のおかげで、金委員長の交渉力が高まる、という流れだ。

さらに金委員長にとっては、和平プロセスに向けて誠意を持って行動しているのは自分だ、とのイメージを作り出すことも可能となる。これによって金委員長は、今後、緊張が高まった場合には、和平の妨げとなっているのは北朝鮮ではなく、米国なのだ、という構図を打ち出せるようになった。

以上をまとめると、こういうことになる。南北首脳会談によって生まれた前向きな雰囲気のおかげで、米朝首脳会談への展望はかなり好ましいものになった。だが、期待が先行しすぎるリスクも抱えている。トランプ政権としては、米朝首脳会談に向けて成功のハードルが高くなりすぎないよう、期待値ラインをそれなりに低いところに押さえ込んでおきたいと考えているのではないか。

期待値のコントロールは、特に大切だ。非核化をめぐる米朝の溝が埋まらない可能性が高いからである。先日の板門店宣言では「南と北は、完全な非核化を通して、核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した」と、明記された。

“4手先”を読む2つのコリア

だが、これを見ると、1992年に発効した南北非核化共同宣言から北朝鮮のスタンスは一切、変わっていないことがわかる。南北非核化共同宣言には、「朝鮮半島の非核化を通じて核戦争の脅威を一掃するべく(中略)南と北は核兵器の実験、製造、受け入れ、保有、貯蔵、配備、使用を行わない」と、記されていた。板門店宣言は26年前の合意内容から後退している、といっても過言ではなかろう。ひいき目に見ても、せいぜい同じだ。

非核化について、文大統領が南北首脳会談で最低限の合意しか引き出せなかった可能性が高いことをうかがわせるものであり、米国と北朝鮮が核について歩み寄る可能性が低いことを示唆している。

最近の報道によれば、トランプ大統領北朝鮮の完全な非核化を“一発”で決めたがっている。遅くとも大統領任期中には、この問題にけりをつけたいと考えているようだ。非現実的というほかない。

だが、速攻で勝ちを急ぎたがるトランプ大統領の性格を考えると、同氏をこのような短絡的な思考回路から引きはがすのは難しい。文大統領は引き続き最善を尽くすだろうが、米朝首脳会談が現実にどのように展開するかをコントロールするのは所詮、不可能だ。

そこで、文大統領にとって重要になってくるのが、米朝首脳会談後に向けて手を打つことなのである。会談がうまくいけば、前向きな流れを維持し、会談がうまくいかなければ、失敗のダメージを和らげ、米国が再び「炎と怒り」の好戦的なスタンスに戻らないよう制止する、ということだ。

今後の展開に影響力を行使できるよう、共同宣言に一連の外交予定を組み入れたのには、こうした理由がある。この点こそが、南北首脳会談における最大の(そして、メディアがもっとも過小評価している)ポイントだといってよい。

一連の外交イベントの1つ目が、ハイレベルの軍事当局者会談で、5月中にまず将官級軍事会談を開くとしている。米朝首脳会談に影響を与えるチャンスを1つ増やした格好だ。

2つ目が、「(2000年に南北共同宣言が発表された)6月15日をはじめ、南と北にとって同じように意義のある日を契機に(中略)民族共同行事を積極的に推進」するとしていることだ。これによって、夏から秋にかけてさまざまな共同行事が開催される可能性が大きく開けてきた。

北朝鮮による「キャンセル」というリスクも

3つ目として、離散家族の再会が8月15日に予定されている。家族の再会は、深い共感を呼び起こす人道的イベントであり、感動的な映像がメディアを通じて全世界に流れるだろう。国際世論に影響を与えるという意味では、南北首脳会談以降に行われる共同イベントの中で最大のインパクトを持つことになるはずだ。

そして4つ目が、今秋に予定される文大統領の平壌訪問だ。訪問の時期に多少の幅を持たせているため、韓国と北朝鮮は今後、それぞれの国益にとって最善のタイミングを探ることになろう。

一連の外交イベントを日程にのせたことで、文大統領はある種の「セーフティネット」をつくり出すことに成功した。米朝首脳会談が行われた後も影響力を維持し、トランプ政権が危険な衝動に駆られて軍事作戦に訴えてこないようにするための安全装置だ。なんだかんだいっても、南北が対話を続けている最中に軍事攻撃を仕掛けるのは、とても正当化できるような行為ではない。

もちろん、リスクもある。金委員長がこうした外交日程をキャンセルしてくる展開は大いにありうる。米国が(金委員長の視点から見て)なした悪行を大げさに喧伝する目的で、日程のキャンセルが悪用される可能性があるのだ。米国の「敵対的な政策」のせいで歴史的な和平プロセスが崩壊した、との立場を打ち出してくるということだ。

キャンセルまでには至らなかったとしても、予定を取り消すぞ、と脅しをかけながら、韓国に譲歩を迫ってくる可能性もある。北朝鮮はこれまでに何度も、離散家族再会の機会などをとらえては、このような手を使ってきた。

当然、南北の外交日程のすべてを文大統領がコントロールすることはできない。そこで、文大統領は今、自らの手札を最大化すべく、南北の外交カレンダーの、その先へと目を向けているはずだ。

1つ目が、中国との協力関係構築である。トランプ大統領は折に触れては中国の習近平国家主席を賞賛している。米国のほかに頼る先が必要になった場合、韓国が頼ることが多いのが中国だ。中韓関係強化の動きが、近く表面化しても特段、驚くには当たらない。

文大統領の切り札とは?

次に注目すべきなのが、中国、日本、韓国による3カ国会談だ。北朝鮮に対して強硬路線を貫いている日本が曲者だが、中国との協力関係を打ち出すことができれば、文大統領にとっては、それだけでプラスである。

文大統領の切り札となるのが、「米国に対するバックアップ」と同氏が呼んでいるカードだ。文大統領は以前から、米国、韓国、北朝鮮による3カ国会談の可能性について反応をうかがっている。ただ、米国は韓国が目立つのを快く思っていないため、3カ国会談の開催はハードルが高い。事務レベルでの会合や、その他の対話メカニズムといった形をとることになるかもしれない。

このカードの目的は、米朝首脳会談に「安全弁」を設けることだ。追加の対話機会という安全弁があれば、米朝首脳会談が米国の期待に沿う結果とならなかった場合、会談を2段階に切り離すこともできる。つまり、第1段階では、トランプ大統領と金委員長が試みにあれこれ対話を行い、大まかな協力の精神を謳いあげることを主な目標とし、具体的な合意内容については、第2段階となる追加会談に持ち越すのだ。

単に問題を先送りしているだけではないか、との批判もあろう。だが、2段階協議には利点もある。より現実的な期待形成が可能となるので、1回の会談で何としても成果を出さなければならないとのプレッシャーは弱まる。つまり、トランプ大統領がひとまず「勝った」といえる状況をつくり出しやすくなるわけだ。加えて、トランプ大統領にとっては、外交を通じて成果を上げることが自らのプラスとなる流れに身を置くことになるため、好循環につながる可能性がある。

いずれにせよ、今後しばらくの間は、先日の南北首脳会談によって生まれた期待や雰囲気、外交日程、そして、これらに伴うリスクによって、北朝鮮外交の行方が左右されることだけは間違いない。

(文:Mintaro Oba)